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物語の不思議

 政治的な論争を訴えかけた 「オズの魔法使い」

 

「オズの魔法使い」という物語をご存知でしょうか?
1900年頃に描かれ、当時、童話作家として成功していたライマン・フランク・ボームが、自らが子どもたちに語ってきかせた物語を元に書いた作品です。
物語を聞く限りは、子供達が喜びそうなファンタジー作品だが、L・フランク・バウムというジャーナリストがそれに寓話につくりあげた。
これを聞いて改めて物語りを観ると、なかなか考えさせられるものだった。

<あらすじ>

アメリカ・カンザス州に暮らす少女ドロシーは竜巻に家ごと巻き込まれて、飼い犬のトトと共に不思議な「オズの国」へと飛ばされてしまう。途中で脳の無いカカシ・心の無いブリキの木こり・臆病なライオンと出会い、それぞれの願いを叶えてもらうため「エメラルドの都」にいるという大魔法使いの「オズ」に会いに行く。
旅の途中で、東の魔女を退治したり、西の魔女バケツの水で退治したり、なんとか「エメラルドの都」にたどり着くが、オズの魔法使いはインチキだったのです。魔法使いは「もうおまえたちは知恵も愛も勇気も持っているじゃないか」と言いました。 旅の途中で、かかしは知恵を絞って仲間を助けました。 ブリキ男は、優しさで仲間を救いました。 そしてライオンは、仲間を助けるために勇気を出して敵に突進しました。 彼らが魔法で手に入れようとしたものは、自分たちが歩いてきた道(黄色いレンガ道)で既に手に入れていたのです。 そして、ドロシーは、手に入れた銀色の魔法の靴を使い、故郷カンザスへ帰るのでした。

 

<隠された設定>

・ドロシー:アメリカの伝統的価値観
・トト:禁酒党
・かかし:農民
・ブリキの木こり:工場労働者
・マンチキン:東部市民
・臆病なライオン:1896年民主党大統領候補ウィリアム・ジェニングス・ブライアン
・東の悪い魔女:東部の銀行
・西の悪い魔女:干ばつ
・オズ:金の単位オンスの略号(OZ)
・オズの魔法使い:現職大統領だったがペテン師だったことが分かり人気が急落した
・黄色いレンガ道:金本位体制
・銀の靴:金に混ぜる銀(金銀混ぜて貨幣を鋳造すべしという意見。だからドロシーは銀の靴を履いて金色の道を歩いていく)

 

この頃、大きな金鉱の発見がないため、世界的に金の供給量が減り、そのために中央銀行は貨幣を増やしたくても増やせなかったからである。

ここで米国で主張されたのが、金本位制を廃止して、金に銀を混ぜた金銀複本位制を導入して貨幣の供給量を増やすべきだという主張である(金鉱が見つからないなら、銀も混ぜてしまえばいいという考え方)。その意見に押されて1896年の大統領選に立候補したのがブライアンであった。

19世紀後半カンザス州では、1887年に相次ぐ大かんばつに見まわれ、農民たちは苦しんでいた。
そこで銀による貨幣の鋳造に夢を託す。そうすれば、デフレを退治できると考えたからである。

そして西部の農民達のほとんどが、東部の銀行からの借金で開拓を行う。

しかしこのころのデフレーションの発生は借金の実質的価値を増大させ、西部の農民は苦しみ、東部の銀行が何もせずに潤うという事態になった。
(デフレは資金の借り手から貸し手への所得移転で、インフレは貸し手から借り手への所得移転)

普通の人代表ドロシーは、竜巻に襲われ(選挙で金銀複本位制論者が大勝する夢)、かんばつに苦しむカンザスから、目もくらむほど美しいオズの土地にたどりつく。
OZとは金を量る単位のオンスのこと。
愛犬トト(禁酒党=金銀複本位制に賛同するが、いろいろわき道にそれる。 teetotalers=禁酒主義者の略)と一緒に飛ばされてきたドロシーは、東の魔女(東部銀行家による金本位制の支持者)の上に落ちてきて魔女を退治し(本当は金銀複本位制を支持すると思われていたのに支持しなかったため、ドロシーにつぶされてしまう)、魔女のもとで働かされていたマンチキンの人々を助け出す。
ドロシーはカンザスに戻るために、「エメラルドの都」(緑色一色、つまり米ドル紙幣を通じてしか物事が見えない人々の街、首都ワシントンDC)のオズの魔法使い(大統領マッキンリー=金本位制を主張)に会いに行く。
ドロシーは魔法の銀の靴(銀も混ぜるべしという意見)を履き、黄色い(金本位制。しかしどこに行くか分からない)レンガの道を歩く(金と銀が混ざることになる)。
道中ドロシーはやさしい北の魔女(ニューイングランドのポピュリストたち)から支援を受け、頭の中身は空っぽだけど大いなる常識を備えたかかし(農民)、心が無いことをなやむブリキ男(労働者)、臆病なライオン(金銀複本位制を唱える大統領候補ブライアン)を道連れに、4人で「エメラルドの都」を目指す(大統領選で各地を遊説する)。
「エメラルドの都」でオズの魔法使いに会ったドロシーは、オズからまず西の魔女(農民を苦しめるかんばつ)を退治するよう言われ、西の魔女をバケツの水で退治する(かんばつを解決する)。
いざカンザスに戻してくれるようオズに頼みに行くと、実はオズは偉大な魔法使いに見せかけているだけで、ペテン師だということが分かり、幻滅する(現職大統領マッキンリーはペテン師だったが、大統領選に勝利する)。
南の魔女(南部のポピュリストたち)の助けを借りて銀の靴を履いたドロシーは、カンザスに戻り(大統領選に惨敗して地元に戻る)、かかしは「エメラルドの都」に残り(都市に出てきた農民たち)、ブリキ男は西をおさめる(西部を工業化する)。

ドロシーは最後に、家に帰る道を見つけるが、黄色いレンガ道をたどるだけでは見つからなかった。ドロシーは魔法使いオズが役に立たない代わりに、自分の『銀の靴』に魔力があることを知る。結局、民主党は大統領選挙に敗れ、金本位制は維持されることになったが、1898年にアラスカのクロンダイク川で金が発見され、また、カナダや南アフリカの金の採掘量も増え、結果的に貨幣供給量は増大し、デフレは解消されてインフレ傾向となり、農民は借金を容易に返せるようになった。

 
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